Vol.501「本」
2019年10月26日
15年ぶりぐらいに読み返した本がある。
「プロフェッショナルマネジャー」(プレジデント社)。著者のハロルド・シドニー・ジェニーン氏はITTをアメリカを代表する企業連合体に引き上げた伝説の経営者。自叙伝的な経営指南本で、ユニクロがまだ3店舗ぐらいの頃に柳井社長が読み、これを教科書に経営を進めたとされる。
何かの機会にこの本のことを聞き、すぐに買った。当時僕はユニクロの採用請負をしており、ほぼ社員のように出入りしていた。読み進めていくうちに本の内容が確かにユニクロ社内のあちこちに影響をあたえているように思えた。僕が一番なるほどと思ったのは経営支援組織を社長傘下に設けた時。海外展開と並行して事業買収も積極的にやり始めた頃にその組織の採用が加速した。日本の名だたる企業の幹部候補人材やコンサルファーム出身者など、来る日も来る日も面接し採用に至るサポートをした。
彼らの仕事は、多角的に広がった事業や子会社の経営をサポートすることだった。それぞれの専門分野を生かし事業の課題を把握し解決に導く。場合によっては担当事業に常駐し一緒に腕まくりしながら事を進めていく。それが何とも格好良く、本に書かれていたプロフェッショナル達が目の前で活躍している感じがした。
が、ただ、それだけだった。ユニクロ理解の参考になった程度。採用面接のときのネタに結構使ったので少しは実益もあったかな。
時がたちその本の存在はすっかり忘れていたが、何度かの引っ越しを経ても捨てられておらず、何かのはずみに寝室奥の本棚をスライド(前面が文庫本、その後ろに単行本が並んでいる)した際にたまたま目に入ってきた。手に取り、表装もないオレンジの色あせた単行本を見て、もう一度読み返してみようと思った。ほぼ直観。
読み始めると、かつてとは全く違う印象で脳に突き刺さってきた。年を重ねたからか、当時と立場が違うからか、今の状況によるものか。いずれにせよ、僕に足りてないこと、考えないといけないこと、すべきこと、様々なヒントが飛び込んできて、読みながら考え込んでしまう。
ちなみにこの本、冒頭と巻末は柳井社長が寄稿している。この当時55歳。そこに書かれたことは既に実現されている。ぶれてもいない。やっぱりすごい人ですね。