Vol.472「再構築」

結果的に、新たに事業を立ち上げる機会(以下、新事業)と、既存の事業を立て直す機会(以下、再構築)の両方を経験することになった。前者はまごやさい、後者は農吉。双方とも成功とは到底言えず胸を張って語れる状況にはないが、少し整理をしたくなったので書いてみる。

新事業、参考にする先行事業がない場合は特に、市場性が本当にあるのか(顧客が存在するか)と、その商品もしくはサービスを買ってもらう理由作りが最も大変だったと思う。
大手メーカーのような大規模な市場調査ができるわけでもなく、「絶対お客さんはいる、これなら買ってもらえる」という確信という名の強い思い込みが持てなければ踏み出せなかった。僕のような個人事業スタートであれば尚更、失敗したらすべてを失うかもしれない恐怖感が伴う。

踏み出してしまえば後はやるだけ。TOPの考え=事業戦略・戦術となってスピード感をもって進めていく。不具合や想定違いがあればその都度修正、その修正行動自体がメンバーの当事者意識を高め、事業は形を変えながら成長し、その成長が組織の雰囲気を盛り上げてくれる。

もちろん、当初の設定を失敗すれば顧客はおらず商品は買ってもらえない。故に事業は成長せず、組織の雰囲気は悪くなり瓦解していく。良くも悪くも直接的。

一方、再構築。既存の事業に外部の人間が途中で入って軌道修正を図っていくのは、例えれば走っている自転車の横を並走してハンドルを触ったり車輪に手を突っ込むような感じで、急に乗り込むとバランスを崩して壁に激突するような恐怖感がある。

確かに、過去数年の損益計算書を見ればある程度の状況は分かり打ち手が見えてくるような気がするのだけど、実際に事業がどう回っているのかは現場に入ってみないとわからない。農吉の場合は事業を進める過程で色々な業務・様々な顧客層が積み重なり、それが色々なところで接地しており、まるで複雑にもつれた糸をほぐすような感覚だった。

それと組織風土。急に外部からやって来た異分子は排除の力学が働くことが多く、特に事業の立て直し(ということは現在の否定)の場合はその力学が強く働く。仮に素晴らしい再構築戦略を考えたとしても、メンバーが動かなければ絵に描いた餅で、反発されるとさらに悪い状況になってしまう。

よって、まずは数字による状態の把握と課題の抽出、現状の業務プロセスの理解と改善点の考察、メンバーとの信頼構築を平行して進めることになる。農吉の場合、上記に半年かかった。

次に組織風土の転換を試みた。おっとりして当事者意識が希薄、赤字続きでも特に問題意識を持っておらず、自ら良くしていこうとする意欲が低いように思えた。ただし仕事はかなり忙しく回っており頑張ってる意識は強い。

既にベテランの領域に入ったメンバーの仕事に対する意識を変えるのは結構難しい。しかも、新たなことをするということは今よりもさらに忙しくなることを意味する。言葉を尽くして置かれた現状を説明し、表面上は分かった雰囲気になっても、1週間もたてば元に戻る。

そんな状況もあり先に走らせたのは業務の効率化と顧客の整理+品質の向上だった。これは収益上の大きな課題でもあった。売上を下げてしまうので見かけ上はあまり良くないが、時間の創出ができたのと、この過程でメンバーからの信頼を得ることができたのは大きかった。利益率が改善し結果的に減収増益となった。ここに至るまでに2年。

今期は反転攻勢、売上拡大を第一目標に事業を進めていく。
それと、もう一事業、再構築を進めないといけないかも。本日これからまた悩みます。

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