12「今日一日」
2018年4月22日
光溢れる田園風景を窓越しに見ながら、少し前まで佳穂が使っていた勉強机で独り言を書き始めた。どの田んぼにも水が入り、あらがきをするトラクターの音が遠くから聞こえてくる。あっという間に山は新緑の黄緑が覆い、ツバメが飛び回っている。こんな日は外で草刈りでもして思いっきり汗をかきたいところだけど、部屋に籠ってたまった机仕事をやっつけている自分が恨めしい。
昨日は、急にクロスエイジの藤野社長がお越しになった。福岡に本社を置くこの会社、農業ベンチャーとしてその筋ではとても有名で、会うたびにとても刺激を受けてきた。九州大学の学生ベンチャーとして起業、専業農家の流通支援を主業とし、14年で10億円を超える事業に成長させたキレ者の経営者。比較してはいけないと思いつつも、どうしても今の自分と比べてしまいちょっと落ち込む。まあ、それでも興味を持ってくれるぐらいまでにはなったかと思い直し、昼から広島市内に営業に出かけた。
こちらも急に親戚の不幸で北九州の実家に帰ることになった妻も同行。新幹線の時間まで一緒に営業することにした。妻が横にいることに少し違和感を覚えながら新規の店舗で事業の説明をしていると、なかなかタイミングよく妻が説明を補足してくる。自分不在の1年間が彼女の事業理解を深めたことを実感した。
無事営業を終え、某病院にお米の納品に行った、タイミング良くとてもお世話になった院長先生と顔を合わせることができしばし四方山話。その後、ワインショップを併設する取引先に母のワインを買いに行き、その足で卸先の小売店の売場も視察。もうちょっと時間があったので、これまた取引先のカフェでコーヒーを頂いた。
広島駅に妻を送った後、折角この時間に市内にいるのだから何件か取引先を回ってみようと思い返し、ノンアルコールビールで何軒か梯子。これまた偶然に知り合いに会い、あれこれ話すうちにあっという間に22時。久しぶりに夜の37号線を運転しながら、beをしていた頃を思い出した。強烈な睡魔と闘いながら窓を全開にしてこの道を何往復しただろう。車を道路脇に止めて仮眠を取り、いつも見るのは居眠り運転の夢。脂汗をかきながらハッと目を覚まし、またふらふらと車を運転し始める。7年前の自分、あの頃から少しは成長できたのだろうか。
家に帰ると満点の星空に蛙の大合唱、少し気持ちが軽くなった。メールの返信を何件かして風呂に入り、もう一度今日を思い出す。
よし、今日はこれでおしまい、午前中するはずだった仕事は明日に回そう。今週は視察3件に恒例の田植えイベントがある。元気に皆さんを迎えたい。